こどもと学ぶ再エネ 再生エネルギー

第一章　地獄（じごく）

それは、ある夏休みの、お昼のできこと……。

ぼくの名前は佐藤太陽！ 趣味はポケモン！
今日はお母さんがでかけてるから、ポケモンたくさんやるぞ～！

（バチン！）

ワアッ！ 停電！？ セーブしてないのに！

太郎くん……。後藤太郎くん……。

だれ！？

ワシはエネ博士。
20年後の世界から、再生可能エネルギーについて教えにきたんじゃ。

ええ～！？ 何この見るからに博士っぽい人～！？
さりげなくぼくの名前まちがえてるし……。
このさい、だれでもいいや！ エネ博士！ この停電どうにかしてください！

この蓄電池にテレビとゲーム機の電源をさすんじゃ。

蓄電池ってなに？ まあいいや。
とりあえずこのコンセントみたいなところにさせばいいんですよね！
わあっ。テレビが点いて、ゲームが起動した！？

庭にソーラーパネルを置いておいたんじゃ。太陽の力で発電して、そのエネルギーをこの蓄電池にためると、停電してもポケモンができるんじゃ。
でも、薄暗いリビングでゲームするのは目に悪いから、ゲームはまた今度にするんじゃな。

ちぇっ！

「ソーラーパネル」ってなんだろう？

ところで、ソーラーパネルってなに？
また停電しちゃったときに、それと蓄電池があればポケモンを続けられるなら、すごくいいなあ～（チラチラ）。

ソーラーパネルは、太陽の熱を電気にかえられるスゴいアイテムなんじゃ。
その力を貯めておくには、蓄電池もセットで必要じゃな。

へえー！ じゃあみんなソーラーパネルで発電すればいいのに。
なんでみんなやらないの？

ソーラーパネル自体はぶっちゃけ用意するのにお金がかかるんじゃ。
小さなものなら百円ショップで見つかることもあるんじゃがのう。

ポケモンのデータがとんじゃうなんて、こんな地獄もう、こりごり！
最近、お父さんもお母さんも電気代が高いって悲しそうにしてるし、どこかの電力会社から電気を買うんじゃなくて、おうちで電気を作って、自分の家の中に発電所を用意して、余った電気を売れたら、お金持ちになれそうだなあ～。

その通りじゃ！ これからは、おうちで発電するのがあたりまえな時代が、かならずやってくるんじゃ。
そうすれば、災害がきてもおうちに蓄電池があるから数日間は大丈夫。
太陽発電、風力発電、水力発電などの自然をたくみに利用したエネルギーは、繰り返し使えるクリーンなエネルギーでもあり、石油のような限りのあるエネルギーと違って、環境に良いものでもあるんじゃ。

えっ！？ 石油っていつかなくなっちゃうの！？

第二章　「なくなりそうなエネルギー」と「なくならない」エネルギー

石油ってなに？

石油は知ってるよ！ お父さんの車は石油で動いてるんだよ。

じゃあ、石油がどうやってできるかは知ってるかな？

なんとなく、外国のどこかの土地を掘ったら出てくるっていうイメージだけあるなあ～。

だいたい正解じゃ。
日本で使う石油の90%以上は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などの外国から輸入してるんじゃ。掘り出したままの油が原油と呼ばれる油じゃな。
この原油を沸点ごとに分けると、それぞれLPガスになったり、ガソリンになったり、ナフサと呼ばれるものになったり、灯油にふるい分けされたりするんじゃ。
つまりLPガスも重油も軽油も灯油も全部石油じゃな。

けっこう色んな種類があるなあ。

地球が2億年くらいかけて生み出して地中に蓄えたもの＝石油

石油は、プランクトンの死骸、生き物の死骸、化石などをもとに、数百万年、数億年という年月をかけて、地球が地中に生み出したものなんじゃ。
それを人間が掘り起こして、工場に運んで、生活のなかで使えるようにしてるということじゃな。

原油は湧き続けるものだけど、採って使える状態になるまでにメチャメチャ時間がかかる、ってことなのかなあ……？

その通りじゃ。
しかも、「その時の人間の技術で掘り出せる量」が「実際に使える量」なんじゃ。

永遠に使えるくらいの量の石油が地中にあったとしても、掘り出せないと意味ないもんね。
石油のエネルギーは、「なくなる」ことはないかもしれないけど、「使えなくなる」ことはありえるってことなんだなあ～。

いっぽう、太陽の寿命は推定百億年。ほぼ永久に不滅。「繰り返し使い続けることができる」から、再生可能エネルギーと呼ばれてるんじゃ。

でも、石油を輸入できなくなったら、車はどうなっちゃうの！？
お父さんの車でキャンプに行ったり、遊園地に行ったりできなくなっちゃうの！？

再生「不可能」エネルギーを使い続けると、チョコレートが食べられなくなる！？

石油のエネルギーが使えなくなると、日本はメチャクチャになるんじゃ。
まず、市民には買えないくらいガソリンの価格が高くなるじゃろうな。
バスやタクシーの運賃も、近所のコンビニまで運んでもらうのに数千円かかるようになるかもしれん。
物を運ぶのにお金がかかるということは、海外から輸入する食べ物、たとえば、バナナの価格が高くなって、ひと房500円くらいになるかもしれん。

高級食材じゃん！

石油を使って走る車の排気ガスは、地球温暖化の大きな原因でもあるんじゃ。
しかも、地球が暑くなると、カカオが育てられなくなるから、このまま人間が油断してると、チョコレートが食べられなくなる時代もやって来るんじゃ。

ええー！？ チョコクリスピーもチョコレートケーキも！？

チョコバナナも、チョコプリンもじゃ。あと、地球温暖化の影響で近い将来、スコールと呼ばれる急激な雨が、たびたび日本でも降るようになるとに言われてるんじゃ。

急に雨が降ることがひんぱんにあったら、サッカーもドッジボールも今までみたいに楽しめないじゃん！
急に不安になってきたよ～。地球温暖化怖いよ～。
そういえば、20年後の世界からきたって言ってたけど、20年後の日本ってどうなってるの。

平均気温が＋3℃上がって、熊谷の夏は最近、最高気温44℃を記録したんじゃ。

44℃！？ 僕が30歳くらいになる頃の日本って、そんなに暑くなってるの！？

第三章　再生可能エネルギーってなに？

自然のなかに常に存在するエネルギー

チョコクリスピーがない世界なんて絶対に嫌だ！
エネ博士、これはなんとしても解決しないといけませんよ！

こればかりは、国や政府だけが頑張っても変わらないんじゃ。
限りある石油、石炭、天然ガスなどのエネルギーの使用を控えて、太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマスなど、限りないエネルギーを使っていくこと。
これは実は我々一般市民にも可能なことなんじゃ。
石油や石炭を使い続けると、温室効果ガスが沢山でてしまい、温室効果という文字の通り、地球が暑くなるんじゃ。
一方、再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出しないから……。

ソーラーパネルを街に増やせば、
チョコレートを食べ続けることができるってこと？

そんな感じじゃ。

第四章　電気自動車の時代がやってくる！

「充電器スタンド」がある家も珍しくなくなる！？

ちなみに、車はこれから、電気自動車の時代になっていくんじゃ。

電気自動車！？ 車ってスマホみたいに充電して走れるの！？

スマホみたいに、自動車も充電器スタンドで充電して走れるということなんじゃ。

もしかして、ソーラーパネルを家に沢山置いて、自宅に充電器スタンドを作れば、おうちで車を無料で充電できるってこと！？

設置するのにそれなりにお金はかかるんじゃ。お手入れも必要なんじゃよ。
でも、ソーラーパネルは十年くらい使い続けると元を取れて、むしろ副収入が入るようになるんじゃ。

オトナになったら、このままだと44℃のなかをスーツ着て歩かなきゃいけないんだよね？
そんなの絶対嫌だから、街にもっとソーラーパネルがたくさんあるといいなあ～！

第五章　楽園（らくえん）

発電自給率300％超えのドイツの村で起きていること

もし、日本がもっと風力発電や太陽光発電に頼るようになったら、どんなふうに変わるの？

たとえば、再生可能エネルギーの先進国ドイツにあるライン・フンスリュック郡はもともと、年間400億円かけてロシアから化石燃料を買っていたんじゃ。

400億円！

でも風力発電の設備、蓄電池を沢山用意したら、ロシアからエネルギーを買う必要がなくなり、年間10億円分の再生可能エネルギーを売れるようになったんじゃ。

その地域の人達が豊かに暮らせるようになったってこと？

そうじゃ。太陽の熱で沸かすからお風呂代もタダ同然。
貯まったお金できれいな橋を作ったら観光客もたくさん来るようになって、観光事業の収入で幼稚園、小学校の給食費もタダ。
町づくりにお金をかけられるおかげで、地域を出て都会で暮らしてた若者も
「やっぱりこっちがいい！」って帰ってくることが多くなってるんじゃ。

日本で同じことができたら面白いのになあ

再生可能エネルギーのための大規模な施設を作ろうとすると、山を切り崩さなければならなかったり、土砂の問題があったり、お金の問題ももちろんあるのじゃ。
でも、できるところから再生可能エネルギーを取り組むことで、未来は明るくなっていくハズなんじゃ……あっ時間が……。

エネ博士！ 姿がどんどん透明になっていくよ！
もっとエネルギーについて知りたいのに！

太陽くん……。ワシは……、未来の世界で
パイが焼けたから帰らなければならないんじゃ……。
まずは身近な節電、発電から取り組むことで……未来は変えられるんじゃ……
さらばじゃ……！

料理中はキッチンにいないと危ないから、次は作り終えてから来てね～！！